「日本の現場 立入禁止の向こう側」西澤 丞 写真展
Mandala Design sachiです。
新宿高野ビルのコニカミノルタプラザに行きました。
「日本の現場 立入禁止の向こう側」西澤 丞 写真展|コニカミノルタプラザより転載
機能美。構築美。
そんなワードを漠然と頭に響かせながら出かけたこの写真展。
製鉄。造船。JAXA。イプシロン。加速器関連施設。核融合研究施設。
どの装置や施設も想像していた通りとてもカッコよかった。
どれもおおよそシンメトリーだったりして、自分はS・キューブリックの『2001年宇宙の旅』の宇宙船の内部を思い出していた。
途中、何だか不思議な気持ちになった。
これらの施設は圧倒的に美しい。
だが、そう評価されようとされまいと、装置としての機能を高めていく過程があり、その最適なかたちとしてこうなったのだ、ということを思い出したんだ。美しさを追求した結果、このフォルムになったのではない。
そう。余計な装飾などなしに機能だけを究めた結果がこの形態、という事実が美しいのだと思う。
これが現代美術のオブジェだとしたら、きっとこんなに心を動かされることはないと思ったんだ。
ドックで建造中の原油タンカー。全長300メートルを超える巨体の前に、錨が横たわる(撮影協力:ユニバーサル造船株式会社)
ナショナルジオグラフィック日本語サイトより転載
報道写真にも同じようなことが言えるかもしれない。(「ロバート・キャパ展」でも感じました)
そこに伝えるべき真実の姿があり、かつそのショットが芸術的に優れてもいる、ということがあれば、訴求力が増す。伝播するちからになる。
アプローチの仕方は色々あるだろうが、美しいはおそらく万人にアピールするだろう。普遍的価値だから。
西澤丞氏は
「自分の暮らしを支えているものを自身の目で見て、写真を通じて多くのひとに伝えたい」という。そして「写真を通じて日本の現場を応援する」というコンセプトのもと撮っているとのこと。
単にかっこいい写真を撮るというのではなく、そういう希いや使命感のもとで写真作品を撮りつづけている。
その写真への向き合い方もまた、さきほどの機能美に通底するところがあると思ったのだった。何かを伝えたいと願い、それを精緻にとりこぼしなきよう伝えようとすればするほど、観るものにアピールする写真になると思うからだ。
それにしても「前段加速器」のこのカッコ良さはなに?…笑っちゃうんですけど!
写真家 西澤丞インタビュー | Engadget Japanese
より転載
高エネルギー加速器研究機構
「前段加速器」 陽子ビームを利用して、2006年まで素粒子や原子核等の研究が行われた装置 茨城県つくば市
©Joe Nishizawa
http://www.fashion-press.net/news/gallery/21248/366109より転載
国土交通省関東地方整備局 江戸川河川事務所
「首都圏外郭放水路:調圧水槽」 洪水を軽減するための設備 埼玉県春日部市
©Joe Nishizawa
http://www.fashion-press.net/news/gallery/21248/366110より転載
*音が出ます。
■「日本の現場 立入禁止の向こう側」西澤 丞 写真展
2016年3月2日〜3月31日
コニカミノルタプラザ
東京都新宿区新宿3-26-11
新宿高野ビル4F
「科学や工業などは、人々の暮らしを支える大切なものであるにもかかわらず立入禁止であるために、その実態を知る機会は、ほとんどありませんでした。一方で、現実がどうなっているのかを知らずに物事を判断することは、間違った未来を選択してしまう可能性が高くなり非常に危険です。
自分の暮らしを支えているものを自身の眼で見てみたい、そして写真を通じて多くの人に伝えたいとの気持ちから撮影を始めて10年あまり。今回の展覧会は、私の最初の個展であり、同時に、未発表の作品を発表する場ともなっています。長期にわたる交渉の末、ようやく撮影許可が下りた「日本の現場」の数々を、どうぞご覧ください。」
西澤 丞(Joe Nishizawa)
写真家。1967年、愛知県生まれ。群馬県在住。自動車メーカーデザイン室、撮影プロダクション勤務を経て2000年に独立。科学や工業、インフラなど、「日本の現場」をテーマに撮影中。写真集『イプシロン・ザ・ロケット ―新型固体燃料ロケット、誕生の瞬間』(2013年)、『Build the Future』(2010年)、『首都高山手トンネル』(2007年)、『Deep Inside』(2006年)を刊行。2014年、東京都現代美術館で開催された「ミッション[宇宙×芸術] ―コスモロジーを超えて」展に参加。
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