会田誠展「天才でごめんなさい」

あけましておめでとうございます。
今年も唐草倶楽部をどうぞよろしくお願いいたします。

 

Mandala Design sachi は年の瀬に、
会田誠展「天才でごめんなさい」 森美術館
を見てきました。
感想は、そりゃこんな展覧会は天才にしかできないな!ということ。
タイトルは、あるいは「変態でごめんなさい」でもよかったかもしれないな、と思いました。
いや決して悪い意味ではないです。いい意味です。笑

 

 

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ー 奇才 会田誠の全貌が明らかに!
会田誠は、今日最も注目されている日本の現代アーティストのひとりです。その作品は、グロテスクでエロティックな作風を見せたと思えば、一方では政治的、歴史的な課題への鋭い批評性を見せます。また日本の現代社会を投影しながら、同時に伝統的な美術作品や様式も多く参照されています。ただ、その作品を俯瞰してみると、この多義性こそが日本社会の縮図のように見えてくることも事実です。会田誠の美術館での初個展となる本展では、デビュー以来20年以上にわたる会田の混沌の全貌を、新作を含む約100点を通して明らかにします。ー
(森美術館サイトより引用/以下、写真もすべて同サイトより引用)
http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/about/index.html

 

入り口から入ると、まず初期作品やおなじみ戦争に関するテーマの作品が並ぶ。中でも古い襖に書かれた「 紐育空爆之図」は有名で、自分も以前どこかで見たことがあった。

 

 

20130104_300643《 紐育空爆之図にゅうようくくうばくのず(戦争画RETURNS)》1996年

 

 

それからこれもお得意の女子シリーズ。
20130105_301659《切腹女子高生》2002年

 

 

興味深かったのは、小中学校の図工や美術で我々誰もが描いてきた、図画やポスターなどのコーナー。
それが彼の手によって、完全に再現されていた。
入学から順に、ベニヤ版のボードに貼られており、どの画用紙の下にも「会田誠」と書かれた白い紙がついている。(一番最初の作品は大人(先生)の字で「あいだまこと」と書かれていた。芸が細かい)
ポスターの文字は「あいさつをしよう」とか「だめ。ぜったい」とか「自然を守ろう」とか。高学年になるに従って、標語の質もそれらしく変化していく。懐かしく思った。大昔の自分に出会った気がしたのだが、我ながら何も考えずに描いていたな、と変な感心をした。こう書いておけば正解。先生に注意されない。無難。そう思うことを自動的に描くように訓練されてきたんだなーとしみじみ思う。これじゃ天才は生まれにくいわ。
…と、一見示唆に飛んだ思索的なコーナーにも見えかけたのだが、見ている人たちにとってはここは自由区そのもののようだった。
くすくすと一人で笑う人、「おれにも描けるし」と連れにささやく人、「もうギャグ日の世界だわー」という感想まで聞こえてきた。みんなの顔が笑い顔。楽しかった。

 

Twitterのつぶやき(iPhoneでのスクリーンショット?)がびっしりとコラージュされた巨大なモニュメント作品もあった。どれも原発や放射能関連のツイート。「原発事故によって生じた、日本人の心の分裂・断絶について感じた驚き」を表したとのこと。

 

「18歳未満の方の入場をご遠慮いただいている特定のギャラリー」(通称18禁部屋)というスペースもあった。
幕をくぐって入るとそこは変態ど真ん中ワールド。自分は普段あまり見ることのない、美少女の缶詰やら美少女ヒロインのエロマンガやら美少女犬やら(これは非常に美しい日本画だった)の世界。日常的にそういうものに接する文化をお持ちの方々には特段に驚く作品ではないのかもしれないけど。
Mandala Design的には「え。これの展示ありなの?」とビビりました。

 

その後も何でもありの作品群が続く。

 

 

20130105_301655《スペース・ウンコ》1998年

 

 

20130105_301710《日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ》

 

こたつに入った会田誠扮するビン・ラディンが酒を飲みながら、友人の会田について、日本について、だらだらと話しているという作品など脱力系アートが盛りだくさん。

 

 

そういった清濁合わせたカオスを抜けたあと、本気の日本画作品群の部屋が開けた。どれも素晴らしく、見ている人もみなしんとしていた。その腕は確か。当たり前だけど(笑)
それでもよーく見るとモチーフはほとんど美少女なんである。

 

20130105_301649《ジューサーミキサー》2001年

 

なぜ少女なのかという質問には「おじさんとか年寄りよりもおいしそうだから」とは作家ご本人のお答え。

 

 

20130105_301648《灰色の山》2009-11年

 

遠目に見ると幻想的な砂山のよう。平山郁夫のシルクロード絵のイメージ。だが、よーく見ると全部背広姿のサラリーマン。人種もさまざま。パソコンやデスクや付箋なんかが一緒くたになってる。

 

 

《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》という新作は横に長い(10メートルくらい?)大作だった。
「素っ裸の女の子たちが、銃で撃たれまくっているという作品。コトバで聞くと印象がよくないと思うのですが、打たれても血が飛び散るのではなく、イチゴや花、ダイヤモンドなど可愛らしいものが散乱している。なるべく女の子から生々しさを排除し、肌の質感はリカちゃん人形のような感じにしています。」(作家本人談)
下は《ジャンブル・オブ・100フラワーズ》のエスキース(下絵)
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日本の現代アートは今こうなっている、ということを楽しみながら知ることができる美術展だと思いました。
3月末まで開催しています。

 

 

会田誠展:天才でごめんなさい
会  期: 2012年11月17日(土)-2013年3月31日(日)
会  場: 森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/about/index.html

 

 


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