「101年目のロバート・キャパ」展

 

Mandala Design sachiです。
ロバート・キャパ展を見に、恵比寿にある東京都写真美術館まで行きました。
ガーデンプレイス界隈、この季節の気持ちよさは格別です。

 

ー 40年の生涯の中でスペイン戦争など5つの戦場を写した写真家として知られるキャパですが、約7万点とも言われる作品の中には、同時代を生きる人びとや友人たちへの思いをこめて写されたカットが数多く存在します。本展は、キャパの真骨頂ともいえるユーモアや生きる喜びが表れた作品を中心に構成し、編集者としてキャパの盟友であり続けたジョン・モリス氏へのインタビュー映像などを通して、次の100年に向けた新たなキャパを見ていただく機会になります。「伝説のカメラマン、キャパ」ではなく、挫折や失意を味わいながらも、笑顔を忘れず多くの友人と友情を深め、女性たちと恋に落ちたボブ(キャパの愛称)の等身大の魅力をこの機会にご覧ください。 ー

「101年目のロバート・キャパ」公式サイトより

 

 

ロバート・キャパを世界的に有名にしたのは、スペイン内戦中に撮影したとされる『崩れ落ちる兵士』(DEATH IN SPAIN)。
キャパは当時22歳。

 

 

この写真は以前、NHKの沢木耕太郎ドキュメンタリー「運命の一枚~“戦場”写真・最大の謎」という番組で扱っていたこともあり、興味を持ってまじまじと見た。
沢木の著書『キャパの十字架』に詳しいらしいが(未読)、この写真はさまざまな角度からの検証の結果、実際の戦場を撮ったものではない、という分析がなされた。つまり「やらせ」というわけだ。

 

番組では、「キャパのカメラは兵士の頭が銃で撃ち抜かれる瞬間をとらえた」(『ライフ』誌 1937年7月号)とキャプションが添えられていた被写体は実は死んでおらず、さらには撮影したのはキャパ(アンドレ・フリードマン)ではなく、恋人であり仕事のパートナーであったゲルダ・タローであった、という指摘もなされていた。
(正確に言うと、「ロバート・キャパ」は、フリードマンとゲルダ・タローのユニット名。けれどもキャパと言ったら、やはり彼ですよね)

 

 


キャパ撮影のゲルダ・タロー

 

それらは例えば、写真の原版(ネガ)がキャパが持っていたライカ判ではなくて、ゲルダが使用していたローライフレックスのもの(6×6サイズの正方形)だった、とか、写っている山の稜線などから判断するに前線となったセロ・ムリアーノからは遠く離れた土地だった、などの検証結果から明らかにされている。
でも、そんなことどうして今まで分からなかったのかなーと素人ながら思っていたら、指摘自体は、40年ほど前から欧米の写真家のあいだで存在していた、とのこと。ふーん。これは今だったら間違いなく2chで吊るし上げられ→スライド使って記者会見、の流れですね。
興味ある方は以下をどうぞ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/崩れ落ちる兵士

 

あまたの戦場写真は本当にものすごい迫力だった。
街角に立ってカメラを構え、ちょっと雑踏を撮るときですら、変な自意識にまみれ、どっと疲れてしまう自分からしてみたら、戦場でどうしたらこんなに兵士に近づいて決定的な一枚を撮れるのか、ほんとに意味が分からない。敵であるドイツ兵に背を向けて、ギリギリした前線を撮ったものもあった。
よほどその場で信頼を得ないと無理だろう。

 

自分がいいな、と思ったのは、”つかの間の安らぎ”シリーズ。
戦時下において、兵士や庶民が人間性を取り戻している、ひとときの安息が切り取られている。
逢瀬を楽しむ若い兵士とその恋人、とか
頭を寄せ合って、出征した息子からの手紙を読む両親、とか
防空壕の中で交わされるゆったりとした語らい、とか
ロシア兵に時計を高く売りつけるズルい顔したアメリカ兵、とか。
悲哀のさなかにも確かにあっただろう、ひとびとの充足がそこはかとないユーモアとともに写し出されている。
キャパは優しくて、ひとが好きだったんだろうなー。

 

キャパの作品群を前に、写真というものについて気づいたこともあった。
それは「被写体の視線の先も構図のうち」ってこと。
だから、視線を持つ「ひと」というものを被写体に据えると、その構図がたちまちダイナミックになる。
ひとが写っていることにより、その写真はものすごい情報量を持つ。
写真は言葉を発しないが、ひとの目線や表情や仕草ほど、饒舌なものはないと感じた。
(自分ももっとひとを撮りたくなりました)

 

 


ドイツ兵との間にもうけた赤ん坊を抱いて家に帰る若い女性・シャルトル/フランス(ドイツ軍に通じていたフランス女性が、フランス解放後に裏切りを糾弾され、見せしめに丸坊主にされた)

 

 


1937年スペイン内戦。空襲警報の音に、避難先に走って逃げる親子

 

 

ロバート・キャパは、1954年インドシナ戦争取材中、地雷に抵触して死亡した。
彼が最期に使っていたカメラ、ニコンSも展示されていた。
そのレンズは割れ、泥がついているように見えた。

 

5月11日 ( 日 )までの開催です。

 


101年目のロバート・キャパ
誰もがボブに憧れた
会 期: 2014年3月22日 ( 土 ) ~ 5月11日 ( 日 )
休館日:毎週月曜日(ただし4月28日、5月5日は開館。5月7日は臨時休館)
料 金:一般 1100(880)円/学生 900(720)円/中高生・65歳以上 700(560)円

 
 


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