石田徹也 ~ 僕達の自画像展 ~

Mandala Design sachi です。

 

20090430_11089041996 飛べなくなった人

 

 

石田徹也氏のことを書こうと思う。

 

昨年末、彼の主要作品70点が展示される個展を見に練馬区立美術館へ行った。

 

彼の作品を前にして、心動かされない人がいるだろうか。

 

ほとんどの作品には作家自身と思われるうつろな目をした短髪の男性が登場する。彼は、現代を生きるわたしたちの分身でもある。
その作品の中にわたしたちは、自分との共通項を容易に見出すことができるのだ。

 

絵の中の人物は深刻なトーンをかもしだしてはいるが、同時にくすりとしてしまうようなユーモアも感じさせ、親しみ易さを覚える。

 

 

20090430_11089051998 めばえ

 

 

スペースを移して2000年以降の作品群の前に立つ。
画風は変わったわけではないのに、受ける印象が全く違う。

 

 

20090430_11089292000年

 

 

まず第一に、格段に絵がうまくなっている。
洗練されてきたという印象。
短期間に大きな作品をいくつも書いているのにも驚いた。

 

そして、何よりも顕著なこと。
それは、作品から諧謔味がすっかり消えてしまったことだった。
作品が、ひたすらに自らの暗部に向かうものになっている。
冷徹に自分を突き放し、観察し、容赦なく描き切る。
自己をつぶさに見つめ、あますことなく掘り起こすどす黒いエネルギーが作品から立ち上ってくるようだった。
自虐的で破滅的。

 

後期の作品になるともう、見ていて自分を重ね合わせたりすることなどできなかった。
鑑賞者は置きざりのままに、ただただ痛々しい青年の苦悩がキャンバスの上にさらされている。
もう半分はあちら側に行ってしまっているのではないかと思われるくらい潔く、生の苦しみのすべてを己を素材にさらけだしている。そこには、たとえ誰かが手を差し伸べようともそれが何の意味も成さないような、手の施しようのないほど深い孤独があった。

 

 

20090430_11089302001年

 

20090430_11089312004年

 

 

自分は、見終わる頃にはぐったりと消耗していた。
にもかかわらず、ずっとその場にいたかった。
床にへたりこんで寝転び、いつまでも彼の絵に囲まれていたかった。
彼の提示した、言いようのない孤独と死の淵のながめは心底恐ろしかったが、同時に、とても魅惑的なものだったのだと思う。

 

石田徹也氏は2005年に踏み切り事故で亡くなった。
享年31歳だった。

 

 

20090430_11089382003 文字

(これは自分がもっとも衝撃を受けた作品。ここではもう言語化できない領域が描かれてしまっていると感じる)

 

 

石田徹也公式ホームページでは、彼のほとんどの作品を見ることができる。この投稿にある画像の出典はすべてこちらである。

 

また、現在浜松美術館では「石田徹也展と静岡県ゆかりの画家」を開催中。~5月17日(日)
お近くの方は是非!

 

20090430_11089691995 ビアガーデン発

 

 


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